『エル・デコ』が注目するアーティスト、KAZUKI
膨大な数のファッション・インテリア雑誌やアートブックが本棚を埋め尽くすクリエイティブな家庭に育ち、気づいた時にはキャンバスに色をのせるようになっていたというKAZUKI。いつしか家族の誕生日や記念日には絵を描いてプレゼントするのが習慣になり、「自分のアートがリビングに飾られるのを見るのが、とてもうれしかった」と当時を振り返る。
大学卒業後は、アートの本場に一度は身を置いてみたいという気持ちがあり、単身ニューヨークへ。現地ではアーティストのためのレジデンスに住んで絵画を描き、音楽をつくり、ギャラリーに通い詰めるなど、文字通りアート漬けの日々を送る。活気に満ちたニューヨークのアートシーンを体感したKAZUKIが帰国後に力を注いだのは、音楽だった。作詞作曲を自身で手掛け、衣装や映像も全てセルフプロデュースし、パフォーマンスを披露すると、その活躍を目にしたファッションや音楽業界の関係者から仕事の依頼を受けるようになり、アートディレクターやスタイリストとしてのキャリアを築いていった。
「過去の全てが今の自分を作っていて、その全ての時間に“アートを描くこと”がいつもそばにあった」と彼女は語る。人生のどんな瞬間も変わらず続けていることが、アートなのだ。
そんな彼女の転換点となったのが、自宅で過ごすことが増えたコロナ禍のある日だった。KAZUKIがアート制作していたところ、インテリアや空間のデザインを専門とするご主人が、その作品とインテリアの親和性に着目。ギャラリーではなくインテリアショップで個展を開催することを提案した。こうして2022年に実現した初個展『Living Art』は好評を呼び、今年3月の『Living Art Vol. 2』へとつながった。展示された作品はほぼ完売、今はクライアントの思いを作品にする「オーダーメイドアート」も手掛ける。