この記事は2025.6.30の メールマガジン に掲載されました。

ARTOTHEQUE アルトテック

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服を選ぶようにアートを選ぶ。感性で暮らしに迎える一枚を。

2025.6.30

ELLE SHOP ART 第4弾「Silent Friend」──女性作家が描く抽象世界

by CHIHARU
エル・ショップ アート担当

美術館で眺めるだけでは、アートはもったいない。服を選ぶように“好き”で選んだ一枚が、暮らしに寄り添い、人生を共にする“相棒”になるかもしれません。ELLE SHOP ART第4弾「Silent Friend」では、「アルトテック」のアシスタントディレクター 柳生顕代さんが、同世代の視点で抽象作品をセレクト。描き手の想いと観る人の感性が重なり合うアートの魅力を、ぜひ暮らしの中で体感してみて。

三角形で万物の関係性を可視化する――前田紗希

AZUSA TODOROKI[bow plus kyoto]

前田紗希さんのインタビュー動画はこちら

※YouTubeが開きます。

「多角形の中で最小限の形である三角形に万物を置き換えて表現することで、あらゆるものが同じ世界に共存しているのだけれど交わっていない、それぞれの世界でのその関係性を可視化するという作品づくりにこだわっています」(前田さん)

「前田さんは主に三角形、幾何学形態のみで構成した絵画を、油絵の具とペインティングナイフのみで描きます。ソリッドな方法とイメージの反面、キャンバスから少しはみ出た絵の具や、身体性とリズムが滲みでるナイフのあと。その両極性の共存と拮抗が作品に緊張感をもたらします。モンドリアンはキュビストの影響を受けたのち、完全な幾何学形態と三原色を基本として新造形主義を自ら確立しました。最小限を維持して進み続ける道を選んだ彼女が行き着く抽象は何か。10年間のペインティングを経て生まれたドローイングの線から、まさに今作家の歴史が動いていることが窺えます」(柳生さん)

>>前田紗希さんの『ELLE』特集記事はこちら

緩やかに混じり合う色彩が、過去に見てきた景色や記憶を映す――中村百花

AZUSA TODOROKI[bow plus kyoto]

中村百花さんのインタビュー動画はこちら

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淡く混じり合う色彩は、柔らかく、曖昧で、けれど清らかなエネルギーを感じさせる。「記憶の中の景色や光景、自分と他者のイメージ、といったものをずっと探っています」(中村さん)

「大地、海、空が生まれる寸前、混沌から全てが始まる時ってこんな感じでしょうか。中村さんの作品は、神話のプロローグを想起させ共感覚を刺激してきます。混じり合い隣り合う色が、新たな絶妙な色となり、それらが流れるようなフォルムを生み出します。彼女の個人的な記憶の光景が、非常に内省的な筆致で描れた作品を前にしたとき、「自分の内側へと旅をしたのはいつだっただろう?」と問わずにはいられないのです」(柳生さん)

>>中村百花さんの『ELLE』特集記事はこちら

「山と生活」その気持ちの高ぶりをキャンバスで表現――太田桃香

SATOSHI TAMURA

太田桃花さんのインタビュー動画はこちら

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温かく深く、力強く優しい。太田桃香さんがテーマにしているのは、「山」。とはいえそのまま山を描いているわけではない。「山を見たらうれしくなる、気持ちが高ぶるんです。その感覚は、絵を描くときに気持ちが高ぶるのとよく似ていて」(太田さん)

「山を原点とした日常の風景。セザンヌやキルヒナーなど重要な先人たちが数えきれないほど対峙してきたモチーフです。「山」「抽象」というキーワードを前に一切怯む様子はなく、ダイナミックなストロークで抽象化する潔さがあります。一方で彼女の作品には見えないはずのディテール(稜線、道、生き物、生活までも)を想像させる力があり、それは禅庭を前に、広がりと狭まりの世界に同時に身をおいているような感覚です。1点を日常に。大きな世界に小さな幸せを見つけるような毎日を味わって頂きたいです」(柳生さん)

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Vol.4テーマについて

AZUSA TODOROKI[bow plus kyoto]

柳生顕代さんのインタビュー動画はこちら

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ELLE SHOP ART第4弾から、女性アート識者がいち押しのアーティストを紹介するキュレーションプロジェクトがスタート。まずは京都芸術大学「ARTOTHÈQUE」アシスタントディレクター、ARTISTS ’ FAIR KYOTOプログラムマネージャー柳生顕代さんがキュレーションを担当した。「Silent Friend」というキュレーションテーマに込めた、柳生さんの思いとは。「抽象画、どこまでも分からないもの。我々が認知していない領域に連れ出してくれて、どうしても言葉にならないこと、答えの出ない古からの問い、そういったことに直面した時に助けてくれます。作家や時代の背景がレトリックとして静かに投影された本当に良い抽象画に出会えた時、それは一生の宝になるでしょう」。

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