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靴づくりの経験と美意識に裏打ちされた設計で、“雨の日にも品よく履ける”と評判の「テンパレイト」のPVC(ポリ塩化ビニル)シューズ。今回は、同ブランドの代表兼デザイナー和田 さやかさんが、足の形に合わせて選べるローファー&オックスフォードの魅力をご紹介します。
「「そもそも、ローファーとオックスフォードって?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。「テンパレイト」のシューズは鋳型(モールド)を使って製造するため、私たちはカテゴリーを明確に定めています。いわゆるコインローファーのようなフォルムを“ローファー”、イギリスのオックスフォード靴に由来するマニッシュな紐靴を“オックスフォード”と分類しています」。
「木型のフォルムに強くこだわって設計しており、足をすっきり格好よく見せてくれる一方で、甲が高めの方にはややタイトに感じられることもあります。逆に、横幅にはある程度ゆとりがあり、外反母趾ぎみの方でも履きやすいと感じていただけるケースが多いのも特徴です」。
「多くのお客さまから「甲がきつい!」というお言葉をいただきますが、これには訳があります。4mm厚の低反発スポンジのインソールはご使用とともに、“返り“(足の形に良い感じに沈むこと)が生まれます。また、ローファーの構造的に、PVC素材であっても、ご使用とともに履き口が緩んでいきます。それらを想定して、最初の段階ではかなりタイトな甲まわりに設計しています」。
※上図の右に進むほど、甲まわりのホールド感が優しくなります。
「「鋳型が同じなら、履き心地も同じ」と思われがちですが、実はそうとも限りません。同じ木型でも飾りの素材や取り付け方によって、履き心地に微妙な違いが生まれます。これは、ボディに使用しているPVC素材が、上に付いた飾りからの力と、足から加わる力の両方を吸収するため。そのわずかな差が、足あたりやフィット感に影響するのです。「あのモデルはきつかったけれど、こちらは履けた」というケースも少なくありません」。
「オリジナルのビットローファー“JAMES”は、端正な佇まいとしっかりとしたホールド感が魅力。ベルト部分にはエナメル調の合成皮革を2層に折って使用し、内側には補強ナイロンテープを内蔵。さらに両サイドをアッパーに縫い付ける構造で、足の甲をしっかりと包み込みます」。
「エル・ショップでもベストセラーの“DECO”はタキシードを思わせる凛とした佇まいと、控えめな甘さを添えるリボンが魅力。ベルトには厚手の合成皮革を一枚仕立てで使用し、両サイドをアッパーにしっかり縫い付けた構造です。ベルトの強度は保ちながらも、“JAMES”に比べるとホールド感はやや和らいでおり、甲まわりに少し余裕を感じていただける設計に」。
「“GLEN”は、“DECO”と同じ厚手の合成皮革ベルトを採用したローファー。特徴的なのは、縦長のシルバーバックルをセンターに配したデザイン。視線を縦に誘導することで、足元をすっきりと細く見せてくれる効果があります」。
「今季人気の“KEITH”と“COLLIN”は同仕様で、ローファーラインナップの中でも最もホールド力が高く、甲が薄めの方に特におすすめです」。
「ボリュームのあるシルバーチェーンが目を引く“AUSTIN”は、モード感漂うローファー。履き口の両サイドにのみ、ループ付きの合成皮革パッチを縫い付けた仕様です。甲まわりにベルトや接着がない分、PVC素材特有の伸び代がやや感じられるのが特徴。「ベルトタイプは少しきつかった…」という場合でも、こちらのモデルならよりストレスフリーに履ける方が多いです」。
「トラッドなムード漂うタッセルローファー“TETO”は、甲まわりが大きく開いた軽やかな履き心地が魅力。ベルトを使わず、両サイドのみに合成皮革パッチを配した設計のため、PVC素材ならではの伸び代が最も生かされた一足です。実際に「これなら履けた!」というお声をとても多くいただいており、甲が高めの方や締め付けが気になる方にもおすすめ」。
「オックスフォードの木型は、ノーズを長めに設計しており、ワイドパンツやマキシ丈スカートともすんなりとなじみます。つま先はややシャープな印象ながら、甲のデザインによってフィット感が大きく変わるため、甲高の方にもぴったりなモデルも。種類が多く、最初は少し戸惑うかもしれませんが、見分けのポイントは意外とシンプル。「アッパーの装飾が何層か」に注目すれば、ホールド感の違いが分かりやすくなります」。
「今回は、ホールド感がしっかり目なものから優しいものへと、5段階のデザインに分けてご紹介します」。
「大ぶりのタッセルがアクセントになった“ORLAND”は、トラッドにもモードにも振れる万能な一足。甲部分には、エナメル調の合成皮革に2カ所のゴムスリットを加えたパーツをしっかり縫い付け、その内側にはゴムベロを内蔵。この構造により、甲まわりをしっかりとホールドし、踵が浮きにくく安定した履き心地を実現しています。一方で、甲が高めの方にはややタイトに感じられる場合も。「雨でも絶対に足を濡らしたくない」方に、特におすすめのモデルです」。
「レインシューズ特有の無機質さを軽減してくれる“BREA”は、金具を使わないデザインが好評で、お受験シーンでも人気のモデル。ゴムベロとリボンのダブル構造のため、しっかり目のホールド感が得られます。一方、“FRANCO”は、ゴールドのダブルバックルがモードな印象。内蔵ゴムバンドにより、脱ぎ履きもスムーズです。こちらもゴムベロ仕様。オックスフォードの中では比較的しっかり足にフィットする2型で、踵抜けしにくく、バランスの取れた中間的フィッティングにあたります」。
「甲部分にスタッズ・パール・ラインストーンと、異なるアクセントを効かせた“OMBRE”“PEIGE”“ONYX”は、デザイン違いの姉妹モデル。いずれもゴムベロのみのシンプル構造で、足入れはスムーズですが、ホールド感はやや控えめです。ゴムベロの伸縮がストレートに感じられ、甲高の方にも比較的フィットしやすいモデル。見た目の華やかさと履きやすさのバランスを求める方に、ぜひチェックしていただきたい3型です」。
「シンプルを極めたミニマルデザインの“BAKER”。幅広のゴムバンドをアッパーに直接縫い付け、縦長のゴールドループに通しただけの潔い構造で、ベロもあえて省いた仕立てです。その結果、「テンパレイト」の中で最も足入れがやさしく、どんなに甲が高く幅が広い方でも無理なく履ける一足に。機能性はもちろん、シャープなルックスで装いを選ばない万能さも兼ね備えています」。
「“OWEN”は、幅広のテニスシューレースを大きめのシルバーアイレットに通した、クラシックな本格紐靴スタイルのオックスフォード。ベロ部分にはやわらかな合成皮革を使用し、足あたりもやさしいです。紐でしっかりと甲を調整できるため、甲の高さや足幅に個人差があってもフィットしやすく、踵が浮きにくいのがポイント。このカテゴリーの中で、最も安定した正統派の履き心地を得られる一足です」。