この記事は2023.8.20の メールマガジン に掲載されました。

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久しぶりの旅で感じた自由なムード。空気感までまとう「カレンテージ」秋冬コレクション

by 塚崎 恵理子さん
「カレンテージ」ディレクター・デザイナー

“今と未来を繋ぐビンテージ:世代をこえて今を生きる人々へ“というふたつの意味を込めて、タイムレスに愛される服に現代的なエッセンスを加えた「カレンテージ」。2023年秋冬は、ドイツとフランスの旅をインスピレーションソースに、生き生きとした感動をウェアラブルなアイテムに落としこんでいます。同ブランドのディレクター・デザイナー 塚崎 恵理子さんが、そのコレクションへの思いとアイテムの魅力を語ります。

「コロナ前までは気持ちの切り替えや次シーズンのイメージソース探しのために、シーズンごとに出ていた旅。今回、2023年秋冬コレクションをつくる前に2年半ぶりに海外へ出発し、およそ2週間に渡ってフランスとドイツを巡りました。フランスでは以前からお世話になっている生地メーカーのアーカイブを見に行ったり、蚤の市で材料探しをしたりの散策を。ドイツではずっと行きたかったバウハウスにまつわる場所を訪ねました。その中で特にインスピレーション源となったのが、バウハウスの建築や旅先で出会った人たちの自由なムード。画面越しでなくリアルに経験して感じたムードや感動を切り取って製作できました」。

「バウハウスは1919年に設立され、1933年にナチスによって閉校されるまでの14年間という短い期間だったにも関わらず“モダニズム”というデザインの枠組みを確立し、現在のデザインに多大な影響を残した総合芸術学校。その始まりの地であるヴァイマールは、大学として今も学生たちが学ぶキャンパスを自由に見学することができます。当時の壁画や彫刻が今も残り、良い意味でまだ統一されていない当時の実験的な挑戦、情熱や衝動を感じる場所で感動的でした。壁画のカラー、学生たちがつくったベンチの色、随所に効いたピンクが印象的で、今回のコレクションではそれらをベルベットやニットなどで表現しました」。

「丸や四角などの単純な形を組み合わせた壁画のデザインや当時のアートポスターからインスピレーションを受け、オリジナルで描いたパターン。それをあえてモノトーンで凹凸感のあるジャカード素材で表現したカーディガンです。透け感のあるクリアな質感とウールのフワッとしたタッチをミックスすることで新鮮なマテリアルに。淡いアプリコットカラーのドレスシャツをスタイリングしたルックがお気に入り。このシャツはフランスの蚤の市で購入したビンテージのスパンコール刺しゅうの端切れを元に、インドで刺しゅうのディテールをプラスしています」。

「ヴァイマールを出て向かったのは、デッサウという街。当時の学長ヴァルター・グロピウス氏が設計したバウハウスを象徴するモダニズム建築であるデッサウ校舎が今も残ります。ここでは、当時の学生寮に宿泊し、ゆっくりと空気感を感じることができました。とにかく印象的だったのが、シンプルでモダンなデザインの中にあるカラーコーディネーションやマテリアルのミックス感」。

「モノトーン基調のシアタールームの天井がシルバーだったり、バウハウスを代表するアーティスト、ヴァシリー・カンディンスキーの部屋の壁の一部がゴールドだったり、メタリックな色使いも新鮮に感じられたので、ニットに落とし込みました。シルバーとゴールドの糸とモヘア糸を合わせて編み、ふわっとした高級感のあるニットに仕上げています。ラメ糸特有のチクチク感がない着心地もポイント」。

「カフェで朝食をとっているときに見かけた女性、道に迷っているときに立ち止まって教えてくれたマダム、街で偶然何度も見かけたカップル、デッサウやその後に向かったベルリンで見かけた人たちの自由なムードも今シーズンの大事なインスピレーション。クラシックなツイードやレザー、ファーアイテムは、街行く彼らの着こなす姿がとてもかっこよくて、コレクションに盛り込んでいます」。

「グレンチェック柄のツイードは、糸から選定してオリジナルで作成。さらにその上にグレーやサックスカラーをプリントしてマットでモダンな印象に仕上げたスペシャル素材です。チェスターコートやミニスカートは、クラシックでシンプルなデザインなので、プリント部分とそうでない部分のコントラストが引き立ちます。ショート丈のドリズラージャケットは一見スタンダードなデザインですが、着用するとクチュールライクな丸みのあるシルエットに。「カレンテージ」らしいパターンメイキングでモードな雰囲気に落とし込んでいます」。