【EDIDAインタビュー】薄上紘太郎が考える、これからのプロダクトデザイン

2025.07.14

「エル・デコ インターナショナル デザイン アワード2024」の日本版独自賞、「ヤングジャパニーズデザインタレント賞」を受賞した薄上紘太郎。彼がデザインしたスイッチやケーブルの露出が一切ない、磨き上げられたステンレス製のシリンダーが重なる照明「Moment」。インハウスのデザイナーとして腕時計のデザインを担当していたこともある彼に、プロダクトデザイナーとして大切にしていることについて話を伺いました。

プロダクトデザイナー薄上紘太郎の原点

「学生時代は、宮城大学と金沢美術工芸大学でプロダクトデザインを学びました。卒業生に工業デザインの経験をもとにインテリアデザインの分野でもグローバルに活躍されている方が多く、その存在も大きかったですね。」
「卒業後は時計メーカーに就職しました。ちょうど僕が就職する2016年頃は、世の中の製品デザインの流れが大きく変化していた時期でした。そうした中で、『これからも残り続けるプロダクトは何だろう?』と考えたときに、カメラと時計が思い浮かんだんです」
  
<写真>Y.S.M PRODUCTSから発表したポータブル照明「Moment」。素材はアルミニウムとステンレス。現在3サイズでの展開。点灯、消灯はタッチレスセンサーで操作。

ミラノ・サローネで発表した照明作品「Moment」

腕時計デザインを長らく手掛け、金属素材の扱いを徹底的に学び「同じ金属でも、ヘアラインやポリッシュといった仕上げのわずかな違いで全く印象が変わります。そこに美しさを見いだすプロセスが面白いんです」と話します。
素材への知見をインテリアのジャンルで生かし、「情緒に訴えるものをつくりたい」という気持ちから照明デザインに関心を持ち始め2024年、ミラノ・サローネのサテリテで発表した照明作品「Moment」。
照明メーカーのY.S.M PRODUCTS との協業は、試作段階から精度は高く、会場でも驚かれるクオリティでした。「点灯していないときでも、空間の中に置いてあるだけで美しい佇まいを目指しました」と振り返ります。 <写真>「Moment」の製造工程。熟練した技で部材にヘアライン加工を施しています。

素材をしなやかなに捉える感性

彼が⼤切にしているのが、「素材の既成概念にとらわれない自由な造形感覚」。ハードな素材を使いながらも、それをどこか柔らかく、みずみずしく表現することだそう。
「素材の使い方に、優しさや軽やかさが感じられて、でもきちんと芯が通っている。構造や剛性へのこだわりとは異なる視点から、プロダクトの魅力を引き出しているように思います」
これまで金属を主な素材として取り扱ってきたが、だからこそ「強くなりすぎない造形」に意識的に取り組んできたといいます。
 <写真>面の角度と反射を造形のコンセプトにデザインしたスツール。「平面」と「斜面」のプロポーションを追求し、「斜面」が立体の主役になるよう意図されています。

金属を追求し、たどり着いたデザイン

目指しているのは、金属だけにとどまらない素材との対話。最近は照明や時計といったスモールプロダクトから、家具のような空間的なスケールのアイテムへと視野を広げつつあります。
「石やガラスは“重たい”素材ですが、敢えてそこに軽やかさや匿名性を与える表現にトライしてみたいですね。でもまずは金属の美しさを追求するデザインをとことん深めること。深く突き詰めることで、新たな素材に対しても独自の視点を見出せると思うんです。」
ハードとソフト。機能と情緒。その境界線上を狙い、所有する喜びを改めて思い出させてくれるような、実直なプロダクトデザインの在り方へとつながっています。
 <写真>反射板にアルミの結晶模様加工を施したブラケットライト「Sail to the Moon」。光に対して自在に角度を変えることができる構造と、太陽と月の関係を重ね合わせて名付けられています

デザイナー 薄上紘太郎

薄上紘太郎/デザイナー。1991年福島県生まれ。2013年宮城大学事業構想学部デザイン情報学科卒業。2016年金沢美術工芸大学美術工芸研究科デザイン専攻製品デザインコース修了。2016年より時計メーカーにて腕時計のデザインに従事。2024年にデザイン事務所UUD™️を設立。フィジカルな試行錯誤を尊重したデザインプロセスを軸に、製品単体のデザインに留まらずコミュニケーションを含めた包括的なアプローチを自身の領域としている。EDIDA Young Japanese Design Talent、グッドデザイン賞等受賞歴多数。 >>「【EDIDAインタビュー】薄上紘太郎が考える、これからのプロダクトデザイン」